日本の高校教師が教育について自論を語ってます。

高校教師の考えた教育論

現役の高校教師があーでもない、こうでもないと教育について愚論を展開しています。

9月入学のアンケートを!

 9月入学が取り上げられている現状は一歩前進ですが、報道されているメリット・デメリットでいくつか疑問点があります。また、一番の疑問点は、なぜ、当事者である生徒・児童の意見を聞かないのかと言うことです。

 まず一番の疑問点です。大阪の高校生が中心となってネット上で賛同する声を集めて問題提起したことから火がついたと聞いています。この改革案は生徒からの自発的な行動からスタートしています。そして、全国の高校生が当事者として大きな関心を寄せています。私のクラスでも1か月前ぐらいから9月入学案を健康調査のアンケートの感想欄に書いている生徒がいました。最近では友だち同士でも話題にしているようです。もちろん、賛否両論あります。

 そこで、提案ですが、今、厚生労働省がLINEと組んでやっているようなアンケートを全国の高校生に実施できないでしょうか?私はまず当事者である生徒の意見を尊重してもらいたいのです。それで大多数の高校生が、何を問題視していて、何に不安を感じているのか、どういうことを望んでいるのかが見えてくると思います。

 では、次に9月入学改革におけるメリット・デメリット論争で抜け落ちている、あるいは軽視されている点について述べます。

1.現在の高校3年生は最後に当たる各学校行事を経験して卒業したいと考えています。9月から始業にしても、文化祭や体育祭は出来ないかもしれないが、実施可能性が高くなる。夏に卒業となれば、少なくとも最後の卒業式は集まって祝うことができるだろうと、これを最重要視していると思います。来年7月にオリンピックが出来るなら、卒業式やその後の祝賀的な集会は許可が下りるだろうと予想しても無理はありません。大人は進路とか留学とかを重視していますが、生徒たちはそれよりも高校時代にしか出来ないことを重視しています。大学進学者は今でも52%程度です。全国的に考えると、高校3年が学生最後になる人が半分います。仲間との思い出をたくさん作りたいと思っていると思います。

2.次は高校時代の評価です。1学期の中間テストは無くなりました。期末テストもどうなるかわかりません。学校再開となったとして、密集してテスト可能か?無理でしょう。第一テスト範囲の設定すら不可の学校も多いでしょう。また、実技科目はどうするのですか?やったことにしてスルーですか?評価はオール5ですか?9月に再スタートしたからといって、この問題がすべて解決するわけではないですが、少なくともオンラインでのテストが可能になるような環境整備は追いつくでしょう。

 また、9月新学期だからといっても、6月から8月まで3か月もあるのですから、その間に分散登校して実技科目優先で評価することも可能でしょう。多くの評論家の方々は、9月新学期にすると、それまでの月日に何も学校がしないようなイメージを持っていらっしゃるようですが、まず、そんなことはないです。今までの夏以上にたとえ遠隔であっても、分散であっても現場の教師は学習活動や部活動に力を注ぎます。なぜなら、そこには生徒からの、保護者からの期待という視線があるからです。夏休みが長くなってしまうような錯覚を与えてしまう論じ方はやめてもらいたいです。

3.2に関連しますが、就職試験にしても大学入試にしても、現実的には夏が勝負というのが現状です。なぜ、生徒が高3の1学期の成績に最も拘るのか現場の教師は皆理解しています。その成績まで、つまり高1.高2の各学年最終の評定と高3の1学期評定(5段階評価)の平均が評定平均値と呼ばれ、就職や入試に最大の影響を及ぼすからです。

 また、校内で選考する大学の指定校推薦に至っては、この評定平均値と模試成績と遅刻早退欠席数と課外活動評価で推薦生徒を決めるのが通例です。その大事な1学期が飛んでしまい、公正な評価も受けられず、真面目に休まず登校したことも不問になり(コロナに配慮とかで厳しくは出来なかったという理由で)、模試もなく、「先生たちは、どうやって指定校決めるつもりなん?」と不安を抱えています。

 公募による推薦も入れると、多分6割、学校によっては8割の生徒の進路は夏に動いて、秋に決まっているのです。文科省などにお勤めの方々が思う以上に推薦入学者が多いので、大学入学がこのまま4月で、入試日程がズレないとなると、現場は大混乱になります。

 ですから、大学だけでも9月入学にすべきという指摘は私はまだ理解できます。高校入試にも推薦はありますが、中学との連携でうまく配分されるでしょうし、今でも出来レース的な所があります。私見では、遠距離通学や寮を避けて、歩いてあるいは自転車バイクで通える高校が選択されるか、通信制利用者が増えるでしょう。

 中学入試は経済的理由で減少傾向になり、それでもという層の家庭でも大学付属で近くを選ぶのではないでしょうか?東大も今まで以上に「東京の」大学になると予想します。それぞれの地元の公立高校が見直され、そこから地元の国公立を目指す地方分散型進路がアフターコロナの主流になると予想します。

 脱線しましたが、1学期のやり直しというか推薦での就職や大学入試を考えると、この学年は9月に大学入学にするしかないのです。

4.これも2や3に関連しますが、各種の大会が中止になると推薦での進路選択が消えてしまうからです。インターハイがその最たるものですが、実はそれに匹敵するような全国規模の研修大会というのは萩生田杯とか作らなくてもメーカーさんの主催とかでもあります。だから、時間さえ与えてもらえば、各競技ごとに工夫して、無観客ででも実施可能です。仮に大学入学が9月だとすれば、この秋つまり10月や11月に大会をして、1学期末の12月までに推薦してもらい、1月に内定とか、それがまだ無理ならば、3月に大会でも推薦の日程には間に合うと思います。時間的なゆとりさえあれば、今まで積み上げてきた成果を発揮して進路を築くこともできると思います。インターハイが中止になっても、代わりになる全国大会があれば不公平感なく進路選択が出来ます。

 インターハイの中止を受けて、競技は高校で終わりじゃないとか気休めを言う人がいますが、この代での決着というのはあるのですよ。それとこの下の学年も今の成り行きをじっと見てますから、ここで各競技団体ごとにパワーを見せないと、「コロナの流行とかあったら大会も無くなり、進路の保証もないのか」と子どもたちに思われます。そうなれば、その競技は確実に廃れていきます。学校でその部は無くなっていきます。

 現場を知らない人は、各部活動を健康のためとか趣味の延長ぐらいにしか見てませんが、なぜ、日本でこんなにも部活動が盛んなのかは、もちろん、その競技が好きとかやってみたいとかの理由もありますが、やはり進路に有利という面が強いです。体罰や行き過ぎた指導が無くならないのは、進路がかかっているからです。私は大学入試からスポーツ推薦を無くせば良いと考えていますが、現状は国立大学ですら、スポーツ推薦をやってますし、インターハイ優勝=早稲田大学進学みたいな図式が残る限り、何とか大学入学を9月に延期してもらい、有名強豪高校にこっそりスポーツ指定校推薦枠が付与されたというような不公平入試は避けて欲しいです。

5.これは小さくても、みなさん評論家の方々も主張して頂いているので良いのですが、インフルエンザやコロナに怯えての入学試験は無しということです。これはオンライン入試にでもなれば解消されますが、今まで通りの入試を冬には実施出来ないということです。これは誰が考えても無理だと思います。

6.あと評論家がメリットとして挙げておられる留学のメリットですが、私もコロナ以前はそれをメリットとして強調していましたが、アフターコロナの現時点では有力なものではないでしょう。

 しばらくは内向きな感じになり、敢えて留学という学生は減るでしょう。コロナに教えられたのは、やはりどれだけ国に力があるかが問題なんだなということではないでしょうか。交流するも協調するも、もっとはっきり交渉するにしても、その国、その国民に交換価値が無ければ、相手にされないということではないでしょうか。その際に、お金をいくら積んでも意味がありません。お金があっても、感染症は治らないし、知恵も出て来ないからです。金で金を買っても何もならないという事実を突きつけられた気がします。きちっと、うちの子(日本の子)はうちで育てて、それからの話が国際交流なんだなと今は思います。

 長くなりましたが、以上のことも、踏まえて、各学校現場にいる先生と生徒の率直な意見を、ぜひ、冒頭に書きましたように、LINEアンケートをとっていただき反映させていただいた上で判断いただきたいと切に願います。