日本の高校教師が教育について自論を語ってます。

高校教師の考えた教育論

現役の高校教師があーでもない、こうでもないと教育について愚論を展開しています。

大学9月入学再考

  やはり9月入学は見送られそうです。前回も前々回も書きましたが、大学だけ9月入学にしてくれるだけでいいのに、小学校から大学まですべての学校で9月入学にしようとすること自体が的外れだと思います。学習機会の確保とか言われていますが、今のままでならば、夏休みと冬休みを短縮すればマイナス1週間で済みます。第2波や第3波が来れば別ですが、6月から学校を再開すれば、遅れは実質1週間だけです。ですから、2年生や1年生であれば十分取り返すことができる時間です。そんなに悲観的になる必要はありません。
 また、今年中止になったインハイや甲子園も、来年ワクチンが完成されていれば、今の2年生や1年生はチャンスが十分あります。
 問題なのは、今年の現高校3年生の大会と受験についてなのです。
 今の高校3年生については、授業日数云々というより、9月から始まってしまう推薦入試に間に合わないのです。1学期が8月8日まで伸びたら、それだけ期末試験も後ろになります。当然成績が確定するのは8月8日の少し前です。そこで推薦に使う仮評定や出欠が決定します。通常であれば、7月下旬には決定していることが約3週間の遅れです。
 さらに、今、インハイや甲子園の代替の都道府県大会が7月や8月に予定されています。それが終わらないと推薦の資料が揃わない生徒が大勢います。大会結果が推薦の決め手になるからです。通常は都道府県大会は6月には終わっています。県大会でベスト4だったとかいう成績が推薦の根拠になるのです。ここでも1カ月は遅れています。
 総合型選抜(旧AO)のエントリーは9月開始です。お盆前に志望校を決めて、お盆明けの17日から志望理由を書いて、エントリーに備えるということになります。エントリーして終わりではありません、1次試験である書類選考で合格したら、次は2次試験対策に移ります。そうこうしているうちに、指定校推薦の選考が校内で始まります。通常でしたら、AO(今度の総合型選抜)でダメだったという生徒にも、指定校推薦の機会は巡ってきますが、今年はどうでしょう。AO(総合型選抜)が後ろ倒しにされて、その結果待ちの間に指定校推薦の校内締め切りが来てしまうでしょうね。あるいは、両天秤かけて、総合型選抜で合格したけれど、指定校推薦になったから総合型選抜を蹴るとかいうレアケースが頻発するのでしょうね。その逆も出て、現場は大混乱になるでしょう。
 おそらく、どこの大学もコロナ不安に乗じて、推薦枠を拡大するでしょう。AO(総合型選抜)も指定校も公募推薦(学校型選抜)もとにかく推薦という形式が増加するでしょう。どの推薦に賭けるのかというような話が例年になく交錯して、担任は頭を抱えることになります。しかもコロナが怖いから推薦で決めたいと親や本人に言われたら、2月の一般入試まで我慢して下さいとは言えません。
 1月2月の真冬に緊急事態でないなど言い切れません。ワクチンも無いので、大丈夫ですとは絶対に言えません。また、10月からの学校型選抜(旧公募推薦)でも共通テストの結果で合格とする国公立大学が多いのですが、共通テストを受験できるのかどうなのか不透明なので、その推薦方法もリスクが高いと思う生徒が多いと思います。
 ですから、夏入試秋入学にしないと、実質上の学習自体が9月10月で終了、2学期の授業は上の空になる高校3年生が増加します。例年だと55万人ぐらいが受験するセンター試験(今度の共通テスト)の人数も大幅に減少するでしょう。もちろん、最後の最後まで勉強を続けようと説得しますよ、現場の教師は。しかし、精神的に弱いとかどうとかではなく、コロナで受験できなくなるかもしれないという恐怖に対しては励ましでは対抗できません。秋に第2波が来たら、なおさらです。
 つまり、一般の方が思う以上に、高校3年生の本気の学習期間は短くなります。冬まで粘る生徒が55万人いたところから大幅に減ります。その分、大学に入ってからの学びの質も落ちます。
 今となっては、全面的に9月入学にはできないでしょう。しかし、高校3年生たちが粘り易くするために何とか4月入学定員と9月入学定員に分割して入試をしてほしいと思います。そうであれば、もし、1月の共通テストを受けられなければ、6月に受ければいいと説得できます。勉強した成果が発揮できます。生徒と教師の努力が報われます。伸びる生徒が出てきます。
 早々に入学先を決めた生徒は12月の2学期末で終わりでいいです。その後、1月から6月まで学習し続ける生徒の支援を我々はしていきます。3月で卒業させても、予備校に入って6月や7月の9月定員での合格を目指す生徒の応援は続けます。
 そういう変形措置を今年だけでもいいので、真剣に検討してほしいです。ここまでくれば、臨時に考えてほしいと思います。そして、おそらく、9月から入ってきた生徒は大学の中で光るものがあると思います。それだけの勉強をしてきた者たちだからです。そして、それが認められれば、大学の9月入学定員は次年度増加すると思います。
 小学校から高校までは4月入学3月卒業で変える必要はありません。大学の9月入学だけを選択肢に加えてもらえれば高校現場は伸ばせる生徒を伸ばして大学に送ることは可能です。
 まだ諦めるわけにはいきません。何万人という生徒の能力開発に関わることです。ひいてはそれが未来の日本の大きな問題に発展すると思います。