日本の高校教師が教育について自論を語ってます。

高校教師の考えた教育論

現役の高校教師があーでもない、こうでもないと教育について愚論を展開しています。

スポーツ推薦の害悪

  大学の宣伝のために集められ、学業そこそこに、競技で目立つ実績を求められるスポーツ推薦の特待生たちが大量にいます。

  大学がこの制度を廃止しない限り、高校もスポーツ推薦での入試をやめません。それは有名大学にこのスポーツ推薦で進学できる見込みをセールスポイントにしているからです。さらに、ここ10年ほどで、中高一貫校でもこの制度での大学進学を謳い文句に募集をしている私立が出てきています。公立中学校では部員の確保が困難でレベルも低い、才能を埋もれさせないように中学から本格的な指導を受けて全国大会に!という形です。

  学業にも励み、一定の学力にプラスしてその上に特技としてスポーツの競技力があるのならば、それはそれで推薦に値すると思います。

  しかし現実はそうはなっていません。スポーツのみの戦績で入学していきます。それも青田刈り競争ですので、早い場合には高校2年時点での戦績で声がかかります。

  それでなくてもやりたくない勉強です。進学のためという目的がなくなり、好きなことだけやっていれば一般生徒が羨むような大学に行けるとなれば、授業は睡眠時間になります。そうする生徒が悪いのではなく、そういう気にさせる制度が悪なのです。

  高校の部活動の指導が体罰を始め、問題が多いのも、実はこのスポーツ推薦のせいです。とにかく何が何でも推薦に値する戦績を作らないと大学に行けないと思い込んでいますので、熱心に指導します。学業を無視してますから時間もオーバーします。管理のために寮生活を強いることにもなります。

  また、当然保護者も大学が目の前にぶら下がっていますので、先生の言うことを聞いて、自分の子供を他の子供よりも良い大学に推薦してもらおうと躍起になります。

  そうしたスポーツ推薦大競争の中で、指導者の逸脱行為がまかり通ることになります。密告されてしまうのは、大体がうまくスポーツ推薦で進学出来なかった生徒の保護者の恨み節だと相場が決まってます。

  もちろんこの制度の最大の被害者は生徒です。スポーツが他の子よりも出来たせいで、目をつけられ、スポーツ推薦のレールに乗せられてしまった生徒が一番の被害者です。

  誰でも冷静に考えると分かることですが、もし、大学までスポーツ推薦で入学できたとして、その先はどうなるのでしょう?スポーツ推薦で就職?プロになる?で、その先は?何歳まで現役ですか?

  学力がないために多くのスポーツ推薦卒業生が苦しむ結果になります。どの段階であっても、スポーツだけで進む先には地獄が待っていると思います。

  怪我、病気、運不運、あらゆるリスクをまともに考えると、学業と両立するのが真っ当です。学ぶ力とそれに対する自信がないと長い人生を幸せに暮らしていくのはシンドイと思います。

  大学が宣伝のためにスポーツ推薦を実施し、それを真似て高校がスポーツクラスを作り、宣伝材料に使うという制度をやめない限り、本来ならば多方面に能力が発揮できる優秀な子供たちの未来を奪うことになります。

  テレビが廃れ、高校野球や大学駅伝の中継が早くなくなり、宣伝効果が薄れてくれて、スポーツ推薦が下火になる日が来てくれたらとまで考えます。高校現場では昔からある深刻な問題です。