日本の高校教師が教育について自論を語ってます。

高校教師の考えた教育論

現役の高校教師があーでもない、こうでもないと教育について愚論を展開しています。

卒業式

 「何が正解かわかりませんが、その中で生徒の皆さんの健康を最優先に考え、何ができるか考えて、このような卒業式になりました。」と、私が勤務している高校の校長は式の最後に卒業生に語りかけました。各教室のプロジェクターに映った校長の表情から苦渋の選択であったことは伝わったと思います。

 保護者の参列無し、在校生の参加無し、教室のプロジェクターの画面を通して号令がかかり、全員が起立して歌う、拍手する。私も紅白の幕が張り巡らされたスタジオ替わりの特設の教室を最初に見た時は、「ここから中継か」とため息をつきました。

 しかし、実際に式が始まると、隣や2階の3年生の教室から君が代が聞こえ、起立着席する音が聞こえてきて、一体感を感じました。カメラの向こうに生徒がいる、保護者がいると感じることが出来ました。

 近隣の高校では、普通に式を挙げたということも聞きました。様々な情報がある中で、うちの学校はどうするのが良いのか、考えに考えて、保護者参列無し、在校生参加無し、卒業生だけ教室で証書授与、挨拶は理事長、校長のみ、あと送辞と答辞有りで行いました。

 式後の各教室でのHRの様子も保護者は知りたいだろうと、各クラスにカメラ係の先生が張り付いて、一部始終をiPadに収めました。「腕が筋肉痛や、話し長いねん」と笑いながら嘆いている係の先生もいました。後で編集して、これも式の模様と共に保護者が見られるようにするとのことでした。

 金曜日、そんな計画を立て、準備している中、安倍首相の全国一律に休校要請という話が舞い込んできました。週明けの在校生に対する計画も既に立てていましたので、何で⁈というのが第一印象でした。

 もちろん、卒業式をしつつ、週明けからの高1、2年生をどうするのが良いのかの葛藤が再び始まりました。式後、会議を開き、まず月曜日1日休み、試験の採点と返却の目処を立て、テストを返し成績を出し終えたら、その後はまた感染拡大の状況を見て、幾つかの案からどれを採択するかを決めていくことで終わりました。

 すぐに一斉メール配信システムを使って、保護者と生徒全員に予定を通知しました。先生方の間では、「YouTubeで授業流したら」とか、「あれで(Classiとかスタサプのこと)宿題出しましょう」とか、「いや、やっぱり学校にも来られるようにしよう」とか様々な意見が飛び交ってました。

 「全国一律に休校」と言われて、「あっ、そうですか、じゃあ」とならない学校に勤めていて幸せだなと私は思っています。「うちの学校はどうするのかを、まずは自分たちで考えましょう。正解は何かなんて分からないけれど、目の前の生徒のために何がやれるか考えましょう。」と常に問い、悩むことで、変な話しですが、職員室に一体感が生まれてます。何とかこれを乗り切って、本当の春を迎えたいという気持ちになっているような気がします。

 有事に際して、大事なことは、困っていることを包み隠さず開示して、「困ってます、何か良い知恵ないですか?」と格好つけずにリーダーが言うことかなと学びました。